2.1. 資産の勘定科目
ここからは貸借対照表の左側にある「資産」の勘定科目にどんなものがあるのか確認しましょう。
会計で使用する資産の意味は、日常的に使う資産の意味と異なります。
たとえば、会社の社長が「当社の従業員は会社の資産です」といっても、会計では、従業員は「資産」ではありません。
この場合、従業員が会社の価値を上げる重要な財産ですという意味で使っています。
会社が消費するだけの労働力ではないということを伝えたいのだと思います。
会社は、従業員と雇用契約を結んでおり、従業員が労働を提供する代わりに、会社は給与としてお金を支払います。
会計上は、このコスト(給与)は「資産」ではなく、「費用」です。
実は近代以前、会社が生身の人間を資産としていた時代もありました。資産に計上されていたのは「ドレイ」として扱われた人でした。
今では信じられませんね。そんな歴史も調べると会計に対する理解も深まってよいかもしれません。
次に、どんな勘定科目が会計上、資産なのか、資産グループに属する代表的なものをざっと確認しましょう。
当座資産 - 流動資産
流動資産の中でもより現金化しやすい資産の勘定科目のことをひとくくりに「当座資産」といったりします。
勘定科目名称 | 概要 |
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現金 | すべての勘定科目の中で最も基本となるのが「現金」勘定です。
10円玉のような「硬貨」や1,000円札のような「紙幣」のほかに、
「他人振り出しの小切手」や「郵便為替証書」などの「通貨代用証券」も「現金」勘定に含まれます。 |
普通預金 | 銀行の普通預金口座の預金残高を記録するために用いるのが、「普通預金」勘定です。 |
当座預金 |
当座預金口座の預金残高を記録するために用いるのが、「当座預金」勘定です。 詳細は「5.1.2. 預金勘定」の仕訳」の章へ |
売掛金 |
ツケで商品を売上げたとき、後日約束した日に、売上代金を受け取る権利(売掛債権)が発生します。
この「売掛債権」を記録するのが、「売掛金」勘定です。 この売掛債権は、顧客からお金( )を回収する事で消滅します。 詳細は「5.1.3. 売掛金勘定」の仕訳」の章へ |
受取手形 |
手形を受け取ったとき、後日手形に記載された支払期日に、記載の金額を受け取る権利(手形債権)が発生します。
この「手形債権」を記録するのが、「受取手形」勘定です。 この手形債権は、顧客からお金を回収する事で消滅します。 詳細は「5.1.4. 受取手形勘定」の仕訳」の章へ |
有価証券 |
資金を運用するために、株、国債、公債、社債などを購入することがあります。
主に、トレーディング目的で株、国債、公債、社債を購入した場合、「有価証券」勘定を用い記録します。 詳細は「5.1.5. 有価証券勘定」の仕訳」の章へ |
棚卸資産 - 流動資産
棚卸資産とは、販売するために仕入れた「商品」、製造業であれば、工場で製造した「製品」、製品を作るための「原材料」、その製作途中にある「仕掛品」のことです。
勘定科目名称 | 概要 |
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商品 |
期末日において、手元の売れ残った商品在庫残高はこの「商品」勘定を用いて記録します。
なお、八百屋にとって商品は「リンゴ」などの果物や野菜のことです。 |
その他の流動資産 - 流動資産
このB/Sでは、当座資産と棚卸資産以外の流動資産をその他の流動資産に含めました。
勘定科目名称 | 概要 |
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短期貸付金 | 他人にお金を貸したとき、後日約束した日に貸したお金の返済を受ける権利(貸付債権)が発生します。 この「貸付債権」を記録するのが、「貸付金」勘定です。 期末日から数えて1年以内に回収予定の部分を「短期貸付金」勘定を用いて記録します。詳細は「5.1.6. 貸付金勘定」の章へ |
前払費用 |
期間を対象にして計算して支払われる費用について、その未経過期間に対応する分を資産に繰り延べ処理するとき用います。 たとえば、借入期間について発生する支払利息、契約期間にわたって発生する支払保険料などの前払い分です。 詳細は「7.2.4. 費用の前払と収益の前受 - 決算」で後述します) |
前払金 | 仕入先から商品を受け取る前に、その仕入代金の一部または全部を支払うことがあります。このとき、後日約束した日に商品を受け取る権利が発生します(前払債権)。この「前払債権」を記録するのが、「前払金」勘定です。 |
未収入金 | 商品以外のモノ(建物や有価証券など)を売却したとき、後日、その代金を受け取る約束を結ぶことがあります。このとき、後日約束した日に代金を受け取る権利(未収債権)が発生します。この「未収債権」を記録するのが、「未収入金」勘定です。商品をツケで売上げたときに発生する「売掛債権」と使い分けます。 |
有形固定資産 - 固定資産
有形固定資産とは、触ることができる実体のある固定資産のことです。
勘定科目名称 | 概要 |
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建物 |
事務所、ビル、店舗、倉庫などを建てたとき、「建物」勘定を用いて記録します。 |
土地 | 工場、事務所、店舗、駐車場などの敷地を購入したときに「土地」勘定を用いて記録します。 |
備品 | 事務所の応接セット(机やイス)、パソコン、コピー機などを購入したとき、「備品」勘定を用いて記録します。 |
車両運搬具 |
普通自動車やトラックなどの車両、オートバイ、フォークリフトなど運搬機器を購入したとき、「車両運搬具」勘定を用いて記録します。 詳細は「5.1.6. 車両運搬具勘定」の仕訳」の章へ |
無形固定資産 - 固定資産
無形固定資産とは、触ることができない固定資産のことです。
勘定科目名称 | 概要 |
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ソフトウェア | 自社で利用することを目的に購入したソフトウェア(プログラム)は、「ソフトウェア」勘定を用いて記録します。 |
特許権 | 特許権を購入したとき、「特許権」勘定を用いて記録します。 |
商標権 | 商標権(会社のロゴやブランド)を取得したとき、「商標権」勘定を用いて記録します。 |
投資その他の資産 - 固定資産
投資その他の資産には、投資活動で発生した債権といった営業活動以外で発生した固定資産を集めます。
勘定科目名称 | 概要 |
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長期貸付金 | 他人にお金を貸したとき、後日約束した日に貸したお金の返済を受ける権利(貸付債権)が発生します。 この「貸付債権」を記録するのが、「貸付金」勘定です。 期末日から数えて1年を超えて回収予定の部分を「長期貸付金」勘定を用いて記録します。詳細は「5.1.6. 貸付金勘定」の章へ |
手形貸付金 | お金を他人に貸したとき、借用証書の代わりに、手形を受け取ることがあります。 このとき発生した「手形債権」を記録するのが、「手形貸付金」勘定です。 商品売上時に発生した手形債権なのか(受取手形勘定)、貸付時に発生した手形債権なのかを区別します。 |
差入保証金 | 建物を賃貸するときに、担保として差し入れる保証金や敷金は「差入保証金」勘定を用いて記録します。 |
繰延資産
支出の効果が将来にわたって現れる費用は「繰延資産」として一時の費用としてではなく、資産として会計処理することが認められています。
勘定科目名称 | 概要 |
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創立費 | 会社の設立に要した費用は「創立費」勘定を用いて一旦資産に記録できます。たとえば、定款作成費用、株式募集費、会社の登記費用があります。会社設立時に支出した費用は、一時の費用とするのではなく、一旦資産に計上し、5年間にわたって資産から費用に計上します。このことを「償却」といいます。 |
開業費 | 会社設立後、営業開始までに支出した開業準備に要した費用は「開業費」勘定を用いて一旦資産に記録できます。これにはたとえば、お店を宣伝するための費用があります。これも5年で償却します。 |
社債発行費 | 社債を発行するのに要した費用は「社債発行費」勘定を用いて一旦、資産として記録できます。たとえば、社債募集費、証券会社への手数料があります。 |
株式交付費 | 会社設立後、新たに株式を発行するために要した費用は「株式交付費」勘定を用いて一旦資産に記録できます。たとえば、株式募集費、証券会社への手数料、その他株式交付に直接支出した費用があります。 |
勘定科目は、セットで覚えよう
勘定科目にはよく「〇〇金」と「金」が付きます。 金と付いても「お金」を指しているわけではありません。 債権・債務のことを指します。 これらは対にして、覚えておくよいです。
確認問題
次の空欄にあてはまるものを選択肢から選びましょう。
ツケで商品を売上げたとき、後日約束した日に、売上代金を受け取る権利が発生する。 この権利は「 __ 」勘定で記録する。
手形を受け取ったとき、後日手形に記載された支払期日に、記載の金額を受け取る権利が発生します。 この権利は「 __ 」勘定で記録する。
商品以外のモノ(建物や有価証券など)を売却したとき、後日、その代金を受け取る約束を結ぶことがあります。このとき、後日約束した日に代金を受け取る権利が発生します。 この権利は「 __ 」勘定で記録する。