商品売買 - 用語の定義
無事に会社の設立登記が完了しました。よっしゃ!金儲けや。
儲けようにも、まだ肝心の商品を仕入れていませんでした。
この章では、当社(本業は八百屋)が仕入先(リンゴ農家)であるアゴヒゲさんからリンゴを仕入れ、
それを顧客(レストランを経営)であるハートさんに販売する「商品売買」取引についての会計処理を確認します。
商売(ビジネス)において、商品をできるだけ安く仕入れ、できるだけ高く販売することは最も基本的なことです。
それ故に、この商品売買は基本的かつ重要なところです。
まず、会計独特の用語の使い方に少しづつ慣れましょう。
商品売買取引
クチヒゲさんは、八百屋を営んでいます。扱う商品は「リンゴ」です。
リンゴは、農家であるアゴヒゲさんから300で仕入れます。
その仕入れたりんごに儲け300をのせ、レストランを経営するハートさんへ600で売上げます。
この一連の取引が「商品売買取引」です。
商品の購入(仕入取引):
当社が商品のりんごを買ってくることを「仕入れ」といいます。
商品の販売(売上取引):
仕入れた商品を顧客に販売することを「売上げる」といいます。
簿記ではよく、商品を仕入れた先を「仕入先」、商品を販売した先を「得意先」といいます。 一般に、商品を販売した先は「顧客」と呼ぶ方がなじみがあるかもしれませんが、簿記では「得意先」と呼びます。
価格と価額
「価格」とは単価のことです。
「価額」とは
単価×数量の合計のこと です。
ここを混同したままにすると、問題文章や解説文章を読んだとき、正確に理解できなくなってしまうので、しっかり使い分けましょう。
図の例でいえば、得意先へ販売した、りんご3個の売上価格は「200」であり、その売上価額は「600」です。 価格(単価)は「@」で表現されることが多いので、本コンテンツ内でも価格(単価)と価額の混同をさけるため「@」を使用します。
取得原価
会計では、この「取得原価」が貸借対照表における表示の基礎となります。 商品などの棚卸資産に限らず、「有価証券」や「固定資産」でも「取得原価」が貸借対照表における表示の基礎(詳細は後述)となります。
返品・値引・割戻
「返品」とは、数量の修正のことです。
「値引 」とは、単価(価格)の修正のことです。
「割戻
街でよく見かける「スーツ2着目から半額」もリベートの一種です。
付随費用(諸掛り)
「付随費用(諸掛り)」とは、商品売買において発生する運賃などの諸経費のことです。
掛けによる仕入と売上
次は、商品を掛けで売上げた場合を確認しましょう。
なぜ、企業間取引は掛けによる取引が多いのでしょうか?
通常、企業間取引は単発取引でおわらず、同一の取引先と反復継続的に取引を行います。
この場合、取引の都度、現金決済しているとお互い手間です。
また、たとえ振込であっても、月に1回まとめて振り込んだほうが、振込手数料も安くつきます。
そのため、企業間の取引においては、1ヶ月の取引をまとめ、一定の支払期日を定めて決済する「掛け」での取引が慣習的に採用されます。
企業間取引以外では、例えば、クレジットカードの支払いが、「掛け」取引です。商品を購入したときではなく、まとめて月末付近に預金口座から引き落とされていると思います。あれは「掛け」取引をクレジットカード会社と行っています。
締め日
掛けによる取引では、ある期間に発生した掛けによる取引の合計金額を将来のある時点にまとめて支払います。
例えば図のように、3月の間に発生した仕入代金の合計900を4月の末日にまとめて支払います。 このような取引条件を「月末締め翌月末払い」といったりします。 3月の末日時点での未決済の掛け取引を集計し、それを翌月末である4月末までに支払うわけです。
みなさんが持っているクレジットカード支払いもこのような支払方法です。 例えば、R社のクレジットカードカードの支払い条件が「月末締め翌月27日払い」だとすると、3月中にクレジットカード払いした分の預金口座からの引き落としは、4月27日に行われます。 ご自身のクレジットの引き落としがどういう決済条件なのか、これを機に確認してみるのも良いかもしれません。
前受債務と前払債権
前払仕入と前受売上は掛け仕入と売上の反対のパターンです。何に対する債権・債務なのか、よく確認しましょう。 「売掛債権」は、あとで売上代金を受け取る権利のことでした。このように金銭の受け取りが将来発生する債権を「金銭債権」といいます。 一方、「前払債権」は、あとで商品を受け取る権利のことでした。したがって、一般に金銭債権ではないといわれます。
買掛債務と前受債務についても同様のことがいえます。ここはよく、混乱の元になりますので、しっかりと確認しましょう。
ここまでのまとめ
商品券取引
百貨店発行の商品券やAmazonのギフトカードをプレゼントしたり、された経験はないでしょうか?
その商品券の会計処理を3つにわけて確認します。
1つ目は、商品券を 当社が発行した 場合の取引概要、
2つ目は、他社発行の商品券を受け取った 場合のその取引概要、
3つ目は、実際の企業(株式会社近鉄百貨店)のB/Sをみて、最終的にどう報告されるのか確認しましょう。
なお、1つ目の当社が商品券を発行する場合の会計処理は、日商簿記検定3級の範囲からは除外されました(1級に移りました)。
難しい内容でもなく、比較して理解した方がわかりやすいため、ここでは一緒に解説してしまいます。
当社が商品券を発行_取引概要
商品券発行側の処理です。これが日商簿記検定3級の範囲ではなくなったのですが、債権・債務の関係は頭に入れておくと整理しやすいので紹介します。
他社発行商品券を受取_取引概要
事例:株式会社近鉄百貨店
最後に、実際の企業(株式会社近鉄百貨店)のB/Sをみてみましょう。
連結貸借対照表の負債の部を見てみると、「商品券」が約88億円あります。
「受取商品券」勘定は、B/Sにはありませんが、売掛金に含めて表示しているようです。
次は、各論点毎に、会計処理を確認していきましょう!