借入と貸付
企業は手元資金に余裕があれば、資金を銀行口座に寝かせておいても仕方がないため、余裕がある分のお金を取引先などに貸すことがあります。
また、手元資金が足りない場合、金融機関や取引先などからお金を借りることがあります。
金融機関などは、預金者からお金を預り、それを企業などに貸付け利ざやを得ることを生業としています。
お金を借りる方からみれば、これは財務活動(資金の調達)であり、お金を貸す方からみれば、これは投資活動(資金の運用)です。
お金を借りる場合、証書という契約書を銀行に渡すパターン、約束手形を銀行に渡すパターンの2つが代表的です。
まずは、証書を使うパターンを確認します。
証書借入と証書貸付
証書借入では、借入人が借用証書といわれる契約書を銀行に渡します。 なお、証書借入は、お金を貸す方(図の銀行)からみれば、証書貸付です。
この借用証書は「金銭消費貸借契約証書」といわれます。したがって、「証書」借入というわけです。 借用証書には、借入金額、借入利率、返済期日、資金使途、返済方法などの諸条件が記載されます。
借りたお金は返済期日に返さなければなりません。貸したお金は、返済期日に返してもらわなければ困ります。
手形借入と手形貸付
手形借入では、借入人が約束手形を振り出し、それを銀行に渡します。これはお金を貸す方(図の銀行)からみれば、手形貸付です。
商品売買の章でみてきたように、リンゴを仕入れたときの決済手段に約束手形を振り出しましたが、手形借入では、銀行からお金を借りるときに、手形を振り出します。
手形借入入は、「手形債務」を負い、手形の所持人は、「手形債権」を有します。
証書での借入れ、手形での借入れそれぞれメリット・デメリットあります。
ここでは詳細は触れませんが、ぜひGoogle先生で検索してみましょう。
証書借入(証書貸付)の会計処理
証書借入で発生した「借入債務」は、「借入金」勘定を使って記録します。
貸付債権は、「貸付金」勘定を使って記録します。
手形借入(手形貸付)の会計処理
手形借入・手形貸付で発生する手形債権・債務は、手形借入人からみれば、財務活動ですし、手形所持人からみれば投資活動です。
商品売買取引(営業活動)で発生した手形債権・債務と区別しなければ、財務諸表の利用者(利害関係者)にその企業の活動が正確に伝わりません。
したがって、商品売買取引で発生した手形債権・債務と区別するために、手形借入人が負う「手形債務」は「手形借入金」勘定を使って記録し、手形の所持人の有する「手形債権」は「手形貸付金」勘定を使って記録します。
こうすることで、手形借入による債務なのか、証書借入による債務なのか、手形振出しによる仕入債務なのか財務諸表の利用者は区別することができます。
次は、例題で確認しましょう。
おまけ:消費者金融には決して手を出さないように!
以前、「リボ払い」で苦しんでいた友人がいました。 金融の世界では、ユーザーの無知と無関心に漬け込み、暴利をむさぼる大人も少なくありません。
昔の映画やドラマなどで、「 トイチ 」なるセリフを聞いたことないでしょうか。 その正体は、僅か10日間で、元本に対して10%の利息支払いという契約です(もちろん、犯罪です)。 借りる方はすぐに返すからとそれで借りることもあるのですが、これは雪だるま式に利息が増えていく大変恐ろしいものです。 一度手を出すと最後、なかなか抜け出せません。
もし、洋服を買う代金として、10,000円をトイチで借り、そのまま忘れて1年経過した場合、総額いくら返済が必要でしょうか。
なんと 324,215 円です。 4年後は、なんと110億円です。
年数 | 「トイチ」で1万円借入の返済総額(単位:円) |
1 | 324,215 |
2 | 10,511,532 |
3 | 340,799,560 |
4 | 11,049,230,488 |
なお、民法第708条では、「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。」とあります。 したがって、不法な契約は無効となり、返済は不要です。法律は義務教育では学ぶ機会が限られるため、民法なども積極的に参考書などで学ぶ機会を作ると何かと便利かもしれません。