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有形固定資産

固定資産の概要

貸借対照表の資産は大きく、「流動資産」、「固定資産」と「繰延資産」の3つに分かれます。
さらに、固定資産は、「有形固定資産」、「無形固定資産」、「投資その他の資産」の3つに分かれます。
有形固定資産にはたとえば、「建物」や「土地」などの不動産、工場やオフィス内で使用する「機械装置」や「備品」、車両などの「運搬具」などがあります。
無形固定資産はその名の通り、直接目には見えない「ソフトウェア」、「のれん」や「特許権」などがあります。
投資その他の資産には、「投資有価証券」、「長期貸付金」、事務所を賃借するために支払った敷金や保証金を記録する「差入保証金」などがあります。
簿記3級では「有形固定資産」と「投資その他の資産」の一部を扱います。「無形固定資産」は簿記2級で扱います。

ということで、これ以降は「 有形固定資産 」について確認します。

有価証券報告書を見てみる。

有価証券報告書は、上場会社がかならず作り、投資家に向けて開示しなければならない書類です。
ディズニーランドなどを運営する「株式会社オリエンタルランド」の2017年3月期の連結貸借対照表の「有形固定資産」を実際に、ちょっとだけ覗いてみます。

みなさんがディズニーランドに行ったときに目にするもののうち、 オリエンタルランドの連結貸借対照表に計上されている「有形固定資産」にはどんなものがあるでしょうか?
オリエンタルランドの有形固定資産は「建物及び構築物」、「機械装置及び運搬具」、「土地」と「その他」の4つにわけられます。
「建物」はアトラクションの外壁やエレベーターなどが含まれ、「構築物」はアトラクションの前にある看板や囲いなどです。
「機械装置」はジェットコースターなどの機械であり、「運搬具」には鉄道やバスなどの車両、船も含まれます。
「土地」はディズニーランドやディズニーシーやホテルミラコスタが立っている敷地そのものです。
「その他」には現在建設中の新規アトラクションなどが含まれます。

ほんとに僅かでしたが、実際の企業の「有価証券報告書」を使って具体的に「有形固定資産」を確認しました。
(この辺り、まとめて財務諸表の読み方的なものは準備中ですので、楽しみにしていてください。)

「有形固定資産」の各勘定名称だけでは、財務分析できるようにはなりません。 その企業において、どんな資産なのかを具体的に考えてるのも良いかもしれません。 またこの様に、「有価証券報告書」をみて、気になった会社の株式を購入しても良いですし、 次に、ディズニーランドに行く際には、本書をもって実際に数字と実物を比べながら、アトラクションを回ってみても面白いかもしません。

取引の流れ毎に詳細に確認

次は、会計処理の論点をそれぞれざっくりと確認しましょう。

1_取得時

付随費用の扱い

有形固定資産を購入したときは、その取得原価には、付随費用を含め、購入した資産に応じた勘定科目を付し、帳簿に記録します。
モノを仕入れるためや購入するためにかかった付随費用は取得原価に含めます。 商品の購入でも同様でした。

未払債務の扱い

投資活動である固定資産の取得代金を後払いする場合に発生する「未払債務」は「未払金」を使って記録します。
営業活動である商品の後払い債務は「買掛債務」とよび、「買掛金」勘定で記録しました。 営業・投資・財務のうち、どの活動の債務なのかを勘定科目で区別すれば、財務諸表の利用者が見て企業の状況がわかるようになります。 したがって、(めんどくさいですが)きちんと区別する必要があります。
なお、日商簿記2級の内容ですが、固定資産購入時に手形を振り出した場合に発生する手形債務は「営業外支払手形」勘定で記録します。
手形は単なる決済手段です。営業・投資・財務活動のすべてに使われますが、その勘定科目は財務諸表利用者に意味のある名称に振り分けます。

2_減価償却(決算整理)

次に、保有時の処理である「減価償却」について確認します。 これは(期末もしくは月次の)決算整理に行う処理です。

減価償却の必要性

そもそも、「棚卸資産」と「有形固定資産」の違いは、なんでしょうか?
商品などの「棚卸資産」は直接顧客へ販売することによってお金にかわる資産です。 また、その仕入原価は、売上時に売上原価に振り替えられます(三分法では、売れ残ったものが商品に振り替えられますが、結果として同じです)
一方で、建物や車両などの「有形固定資産」はそれを複数年に渡り使用することによって、お金(収益)の獲得に貢献する資産です。
また、「有形固定資産」は時間の経過によってその価値が減少します(経年劣化など)。

そこで、固定資産を利用することで得られる収益に対応させ費用(減価償却費)を計上しようとするもの、これが「減価償却」です。

固定資産は「減価償却」を行うことで、使用期間に渡り、資産から費用へ振り替えます。
このように、使用期間に渡って獲得する収益に、毎期の費用(「減価償却費」勘定を使います。)計上を対応させれば、毎期の損益計算が適切に行えます。

実際には、時間の経過によって、どの程度価値が減少していくか、 どのくらいの収益に貢献しているのかを算出することは簡単ではないため、人為的な計算方法に基づき、減価償却費を算定します。

減価償却費の計算方法

減価償却費の計算方法には「定額法」、「定率法」、「生産高比例法」などいくつかあります。 簿記3級では定額法のみ学習しますので、本書でも定額法のみ解説します。
定額法は次の計算式で求め、計算式を構成する要素は、「取得原価」、「耐用年数」と「残存価額」の3つです。 1年分の償却費が毎期定額になることが特徴です。
たとえば、期首に300で取得した車両運搬具(残存価額30、耐用年数3年)の1年目の減価償却費は90です。このときの貸借対照表の「車両運搬具」の金額は210です。
これが2年目の期末では減価償却費として同額の90が資産から費用へ振り替えられます。このときの貸借対照表の「車両運搬具」の金額は120です。
このように毎期、固定資産から費用へ振替えることによって、時間の経過による価値の減少分を費用に計上しようとし...
さらに、費用を収益と対応させることで適正な期間損益計算を行おうとするのが、「減価償却」です。

減価償却費は月割り計算する

期首に固定資産を取得すれば1年分の減価償却費を計上しますが、 期中に取得し、使用開始した場合は、1年間分の減価償却費を月割計算します。

減価償却費の仕訳の方法

減価償却費の仕訳の方法には、「直接(控除)法」と「間接(控除)法」の2つがあります。
直接法は、資産の金額を直接控除する仕訳の方法です。 これは結果として、貸借対照表において「車両運搬具」は210と控除後の金額で表示されてしまいます。
間接法は、仕訳の右側に「減価償却累計額(資産▲)」で記録する方法です。 この方法であれば、貸借対照表において取得原価300から減価償却累計額が控除されて表示することができ、財務諸表の利用者にとっても有用な情報提供ができます。
どちらも帳簿価額は同じになります。 単に、記録の仕方が違うというだけです。

保有時の処理として減価償却を紹介し、その「計算方法」と「仕訳の方法」の2つを解説しました。

減価償却と減損の違い

すこし脇道にそれます。 よくニュースで耳にする「減損損失」と「減価償却」の違いをご紹介します。
あまり深入りしません。図にするとこんなもんというイメージだけでも。

「減損」は資産の将来の収益性の低下を帳簿価額に反映しようとするものです。 したがって、もし固定資産を使用することによって得られそうな収益がゼロだとなれば、 その資産の収益性(価値)はゼロなので、その帳簿価額をゼロにします。
たとえば、オリエンタルランドでは、「シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京」の公演の終了を決議した2012年3月期において、約63億円の固定資産の減損損失を計上しています。

土地は減価償却しない

固定資産のうち、「土地」と「建設仮勘定(製造途中の固定資産)」は減価償却の対象外です。 土地は時間の経過によって、経年劣化などしません。 建設仮勘定は、まだ事業に使っておらず、収益獲得に貢献していないためです。

3_売却時

最後に、売却時の処理を確認します。
期中に固定資産を売却した場合は、期首から売却日までの減価償却費を月割り計算し計上します。

直接法と間接法でのイメージ

固定資産を他者に売却し、売却価額と帳簿価額の差額について、簿価よりも高く売却できれば、「固定資産売却益(収益)」と記録します。
反対に、簿価よりも低い価額でしか、売却できなければ、「固定資産売却損(費用)」と記録します。

商品売買では、分記法を確認したのを覚えていますか?これはそれと同じ考え方です。
営業活動のように、反復継続的に取引を行う場合、その売上総額と売上原価総額の情報が財務諸表利用者にとって有用です。 そこから、事業の売上総利益率が計算できるからです(売上総利益率の高さはそのビジネスの競争優位性を端的に表します)。

固定資産の売却によって発生する損益は、収益と費用を差し引いた損益が結局、利益になったのか損失だったのかだけあれば問題ありません。 そもそも有形固定資産は、顧客に直接売却するために保有するためではなく、企業が営業活動に利用するために保有するものだからでしたね。
したがって、固定資産を売却したことによって発生した損益の記録は、分記法のようになります。

なお、有形固定資産は耐用年数が経過後も利用可能であれば、使い続けます。
買い替えたり、もう使わなくなれば、その有形固定資産は廃棄し、帳簿から除きます、これを「除却」といいます。
除却は日商簿記2級の範囲なので深入りせず、言葉だけ紹介します。

未収債権の扱い

固定資産の売却代金を後日、受取ることで発生する「未収債権」は「未収入金」を使って記録します。
なお、固定資産の売却代金として、約束手形を受け取れば、その「手形債権」は売上債権と区別するため、「営業外受取手形」を使って記録します。

次は、具体的な会計処理を確認しましょう。