電子記録債権・債務
新しく2019年5月以降の日商簿記3級の試験範囲に「電子記録債権・債務」が加わりました。
手形の機能・仕組みとほぼ同じながら、手形の不便なところを解消した「電子記録債権(債務)」という電子的な金銭債権・債務が新たに生まれました。
これは、手形債権・債務を電子的に記録し、管理するものです。
- 事務手続きが手間
- 印紙税もかかる
- 紛失や盗難のおそれもある
これから仕組みを確認します。会計処理は「売掛債権」や「買掛債務」とほぼ同じですし、仕組みは手形とほぼ同じです。
使う勘定科目が「電子記録債権」勘定と「電子記録債務」勘定にかわるくらいですので、安心してください。
電子記録債権・債務の仕組み
電子記録債権・債務は、「電子債権記録機関」が管理する「記録原簿」に必要事項を登録することによって有効になります。
なお、金融庁から認可された電子債権記録機関には、全国銀行協会が100%出資する「全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)」などがあり、日本全国の金融機関が参加しています。 全国銀行協会は、東京都や神奈川県のなどの「手形交換所」の運営も行っています。
記録原簿に登録する方法として2つあります。
- 債権者からの申し出により登録する場合(債権者請求方式)
- 債務者からの申し出により登録する場合(債務者請求方式)
このように、記録原簿に登録することで、当事者間に電子記録債権・債務を発生させることを「発生記録の請求」といいます。
電子記録債権・債務の流れをざっと確認
債務者が発生記録の請求(債務者請求方式)を行う場合を確認します。
以下のように3つのステップを経ることで、当事者間での電子記録債権・債務が発生します。
これが電子記録債権(債務)の流れです。取引当事者だけでなく、約束手形のように銀行が間に入るのがポイントです。
電子記録債権・債務と売掛債権・債務の違い
電子記録債権・債務は、支払期日に自動で口座間送金決済がなされます。
一方、売掛債権・債務は、振込み手続きをしなければ、決済されることはありません。
言い換えれば、売掛債権を保有するアゴヒゲさんは、当社が確実に振り込んでくれるのを待つしかありません。
電子記録債権・債務は、支払期日以前に割引や譲渡により資金化できます。
これはこれまで確認してきたように、約束手形と同じですね。
売掛債権は、ファクタリングなどで資金化できることもありますが、手数料は高くなります(わけもわからない会社の債権を買い取るというのはリスクが高く、その分手数料が高くなりがちです)。
信用力が可視化できるような世界線になれば、買い取ってくれる業者も増えそうですが、まだまだ先になりそうです。
電子記録債権・債務の会計処理をざっと確認
次に、電子記録債権・債務が発生したときの会計処理を確認します。
次は、例題で確認しましょう。