税金 - 消費税と法人税等
1_消費税とは
日本では、1989年に消費税法が制定され、消費税が導入されました。
導入当初、消費税率は、3%でした。徐々に税率は上がり、いまでは10%(食料品の譲渡等には軽減税率8%)です。
消費税は、物やサービスを消費した際に、それを消費した者に課される税金です。
これは勘違いしやすいポイントですが、あくまで消費した者にかかる税金です。
事業者(物・サービスの提供者)が負担しているわけではありません。
会社は商品を仕入れたときなど、物やサービスを購入したときに消費税を支払います。
また、商品を売り上げたときに消費税を受け取ります。
最終的に、売上時に預かった消費税から、仕入れ等で支払った消費税を差し引いた金額を納税します(以下図で詳細に確認します)。
つまり、皆さんがコンビニなどで物を買ったときに支払った消費税は、コンビニ側がいったん預かっておき、
コンビニ側が商品を仕入れる際などに支払った消費税を差し引いて、最終的に、コンビニが納税しているのです。
ちなみに、上記のように、最終的な消費税の負担者は、(物やサービスを消費した)消費者です。
このように、「税を負担する者(担税者)」と「納税義務を負う者(納税義務者)」が異なる税金を「間接税」といいます 。
なお、これまで確認してきた取引ではすべてこの消費税は無視していました。
消費税と他の論点を分けて考えたほうがわかりやすい&説明しやすいからです。
消費税の取引をざっくり確認
具体的に図で確認してみましょう。
当社がクチヒゲさんから商品を仕入れ、それをハートさんに売上げる取引を使って確認しましょう。
1年を通してこの取引だけしかなかったとします。
消費税の納付
消費税_支払い
当社が商品300を仕入れ、消費税30(消費税率10%)を含めた330をクチヒゲさんに支払います。
まずこの30が仕入にかかった消費税です。
消費税_預り
仕入れた商品を600で売り上げ、消費税60(消費税率10%)を含めた660をハートさんから受取ります。
この60が預り消費税です。
決算整理
預かった消費税60から支払った消費税30を差し引いた30を未払債務として計上します。
これは税務署に対する債務です。
決算整理後に、仮払と仮受の残高はかならずゼロとなります。
消費税の納税
(未払)消費税30を税務署に納税します。
消費税_支払い
当社が商品300を仕入れ、消費税30(消費税率10%)を含めた330をクチヒゲさんに支払います。
まずこの30が仕入にかかった消費税です。
消費税_預り
仕入れた商品を600で売り上げ、消費税60(消費税率10%)を含めた660をハートさんから受取ります。
この60が預り消費税です。
決算整理
預かった消費税60から支払った消費税30を差し引いた30を未払債務として計上します。
これは税務署に対する債務です。
決算整理後に、仮払と仮受の残高はかならずゼロとなります。
消費税の納税
(未払)消費税30を税務署に納税します。
消費税の還付
預かった消費税よりも、支払った消費税の方が多ければ、還付してもらえます。
念のために、図で確認しましょう。
※会社設立初年度などは、売上がほとんど立たず、でも商品は仕入れたり、設備を購入したりして、預りよりも支払い消費税が多くなりがちです。
還付を受けるには、課税事業者として届出が必要ですので注意してください。詳細は顧問税理士や税務署にご照会ください。
消費税_支払い
当社が商品300を仕入れ、消費税30(消費税率10%)を含めた330をクチヒゲさんに支払います。
この30が仕入にかかった消費税です。
消費税_預り
わかりやすく今期は、売上げがゼロだったとしましょう。
決算整理
預かった消費税はゼロです。
したがって、支払った消費税30がそのまま、未収債権(還付される消費税)です。
消費税_支払い
当社が商品300を仕入れ、消費税30(消費税率10%)を含めた330をクチヒゲさんに支払います。
この30が仕入にかかった消費税です。
消費税_預り
わかりやすく今期は、売上げがゼロだったとしましょう。
決算整理
預かった消費税はゼロです。
したがって、支払った消費税30がそのまま、未収債権(還付される消費税)です。
消費税の会計処理
消費税の処理には2つの方法があります。
「税抜方式」と「税込方式」です。日商簿記3級では「税抜方式」のみが出題範囲です。
納付の例
消費税_支払い
商品を仕入れたときに支払った消費税30は「仮払消費税」勘定で記録します。
消費税_預り
また、商品を売り上げたときに受け取った消費税60は、「仮受消費税」勘定で記録します。
決算_未払消費税への振替
決算において、この「仮受消費税」勘定の残高と「仮払消費税」勘定の残高を相殺し、「未払消費税」勘定に振り替えます。
このように、最終的な納税額を未払債務としてB/Sの負債に記録します。
消費税_支払い
商品を仕入れたときに支払った消費税30は「仮払消費税」勘定で記録します。
消費税_預り
また、商品を売り上げたときに受け取った消費税60は、「仮受消費税」勘定で記録します。
決算_未払消費税への振替
決算において、この「仮受消費税」勘定の残高と「仮払消費税」勘定の残高を相殺し、「未払消費税」勘定に振り替えます。
このように、最終的な納税額を未払債務としてB/Sの負債に記録します。
還付の例
消費税_支払い
商品を仕入れたときに支払った消費税30は「仮払消費税」勘定で記録します。
消費税_預り
わかりやすく今回は取引・仕訳なしとします。
決算_未収消費税への振替
決算において、この「仮受消費税」勘定の残高を「未収消費税」勘定に振り替えます。
なお、「仮払消費税」勘定の残高はないので、仮受消費税がそのまま未収消費税になります。
還付では、還付税額を未収債権としてB/Sの資産に記録します。
還付
後日、還付を受ければ、未収債権は精算されます。
消費税_支払い
商品を仕入れたときに支払った消費税30は「仮払消費税」勘定で記録します。
消費税_預り
わかりやすく今回は取引・仕訳なしとします。
決算_未収消費税への振替
決算において、この「仮受消費税」勘定の残高を「未収消費税」勘定に振り替えます。
なお、「仮払消費税」勘定の残高はないので、仮受消費税がそのまま未収消費税になります。
還付では、還付税額を未収債権としてB/Sの資産に記録します。
還付
後日、還付を受ければ、未収債権は精算されます。
2_法人税等とは
次に、法人税等を確認しましょう。
法人税等は、「法人税」、「法人住民税」、「法人事業税」の3つの税金のことを指します。
この3つの税金は、法人の利益(儲け)に対して課される税金です。
したがって、損益計算書では、一番最後の費用項目です。
もしかしたら、自然人とは異なり、法人に住民税がかかってくるのは直感的ではないと思ったかもしれません。
「法人」は、法で権利・義務の主体として認められており、様々な経済的活動を行なえます。
そういった公共サービスを享受しているため、税を負担します。
日商簿記3級の出題対象
詳細は、ここでは割愛しますが、法人税等の計算は思った以上に簡単ではありません。
3級では、決算整理において、税引前当期純利益に対して、問題文で与えられた税率(例えば35%など)を掛け合わせて税額を算出するような簡易的な出題がなされます。
また、中間納付(仮払法人税等)と確定申告による納付(未払法人税等の支払い)などの簡易な内容だけが対象です。
参考:「商工会議所簿記検定試験出題区分表などの改定について」
参考_国税と地方税
法人税は「国税」、法人住民税と法人事業税は「地方税」です。
つまり、法人税は国が課税し、法人住民税と法人事業税は地方公共団体が課税します。
このあたりの詳細は、別に詳細に図解したいですが、取り急ぎ参考図書をご紹介します。
非常に読みやすい文章で書かれていて、一読をお勧めします。
教養としての「税法」入門
法人税等_中間納付と確定納付
法人税・法人住民税・法人事業税は、決算において会社の利益を確定させ、税金の申告をします、これを 確定申告 といいます。
この申告に基づいて納付します。
また、年1回決算を行う会社は、年の途中で1年分の法人税の概算額を申告します、これを 中間申告(納付) といいます。
中間申告に基づいて納付も行います。
なお、中間申告によって申告した税額および納付額は、あくまで仮の税額です。
中間申告は納税者の義務ですが、これは年度を通して徴税することで、国家の運営を安定させることが目的です。
中間申告した場合、その年度の確定申告をする際に、納めるべき(確定)税額分から中間申告分を差し引き、その差額を納付することになります。
考え方は先ほど確認した消費税の仮払いと同じです。
図を使って確認しましょう。
法人税等_中間申告
中間申告では、中間決算を行った後、納めるべき税額を計算し、納付します。
この納付税額は、あくまで仮の税額です。
法人税等_確定申告
確定申告では、まず、年度決算を行った後、納めるべき税額を計算します。
確定税額から、中間申告時に支払った税額分を差し引くことで確定申告時に納めるべき税額を申告します。
この段階で、未払債務(未払法人税等)が発生します。
法人税等_納付
納付すれば、債務は精算されます。
(当たり前ですが)中間申告で納めた100と今回の納付税額100の合計が確定申告書の確定税額200と一致していることに注目してください。
法人税等_中間申告
中間申告では、中間決算を行った後、納めるべき税額を計算し、納付します。
この納付税額は、あくまで仮の税額です。
法人税等_確定申告
確定申告では、まず、年度決算を行った後、納めるべき税額を計算します。
確定税額から、中間申告時に支払った税額分を差し引くことで確定申告時に納めるべき税額を申告します。
この段階で、未払債務(未払法人税等)が発生します。
法人税等_納付
納付すれば、債務は精算されます。
(当たり前ですが)中間申告で納めた100と今回の納付税額100の合計が確定申告書の確定税額200と一致していることに注目してください。
法人税等_会計処理
次に、会計処理を確認しましょう。
法人税等_中間申告
中間申告では、中間決算を行った後、納めるべき税額を計算し、納付します。
この納付税額は、あくまで仮の税額です。
法人税等_確定申告
確定申告では、まず、年度決算を行った後、納めるべき税額を計算します。
確定税額から、中間申告時に支払った税額分を差し引くことで確定申告時に納めるべき税額を申告します。
この段階で、未払債務(未払法人税等)が発生します。
法人税等_納付
納付すれば、債務は精算されます。
(当たり前ですが)中間申告で納めた100と今回の納付税額100の合計が確定申告書の確定税額200と一致していることに注目してください。
法人税等_中間申告
中間申告では、中間決算を行った後、納めるべき税額を計算し、納付します。
この納付税額は、あくまで仮の税額です。
法人税等_確定申告
確定申告では、まず、年度決算を行った後、納めるべき税額を計算します。
確定税額から、中間申告時に支払った税額分を差し引くことで確定申告時に納めるべき税額を申告します。
この段階で、未払債務(未払法人税等)が発生します。
法人税等_納付
納付すれば、債務は精算されます。
(当たり前ですが)中間申告で納めた100と今回の納付税額100の合計が確定申告書の確定税額200と一致していることに注目してください。
3_その他の税金
会社が支払う税金には他に、固定資産を取得するときにかかる「固定資産取得税」、固定資産を保有することでかかる「固定資産税」などがあります。
「法人税等」は会社の儲け(所得)に対して課税されます。これを「所得課税」といいます。
上記にあげた固定資産税のような税は、儲けに関係なく課税されます(固定資産の所有に対し、課税される)。固定資産税は「流通税」とも言われます。
不動産の移転に課せられるものであり、利益に着目して課税されるものではありません。
このような税金は、「租税公課」勘定に記録することになります。
- 固定資産取得税
- 固定資産税
- 印紙税
- 自動車税 など
印紙税
収入印紙は、切手のような形をしたものです。
紙で何か契約を提携した場合、その契約金額や内容に応じて印紙税を納めなければなりません。
たとえば、3か月以上に渡る継続的な業務委託契約書を結んだ場合にその契約書に印紙を貼付しなければなりません。
収入印紙の会計処理
購入時
購入したときに「租税公課」勘定に記録します。
購入時一括費用処理しておきます。
決算時
期末日に未使用分を数え、その分を「貯蔵品」勘定(資産)に振り替えます。
これは、商品仕入において、仕入れたときに「仕入(費用)」勘定を使い、
決算整理として、まだ売っていない分(在庫)を数えて、資産に振替えることと似ていますね。
購入時
購入したときに「租税公課」勘定に記録します。
購入時一括費用処理しておきます。
決算時
期末日に未使用分を数え、その分を「貯蔵品」勘定(資産)に振り替えます。
これは、商品仕入において、仕入れたときに「仕入(費用)」勘定を使い、
決算整理として、まだ売っていない分(在庫)を数えて、資産に振替えることと似ていますね。
固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日時点の固定資産の所有者にかかる税金です。
市区町村が税額を計算し、それに基づき納税します。
簿記3級では「租税公課」勘定で記録することだけを押さえておけば問題ありません(
実務上はもう少し、考えることがありますが、どこかで解説します )。
固定資産税の会計処理
固定資産税を納税すれば、「租税公課」勘定に記録します。
次は、具体的に設例を使って確認しましょう。