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土地・建物賃貸借

土地も建物も借りたり、貸したりすることがよくあります。
ここでは、建物を中心に確認します。土地であっても取引と会計処理は同じです。

多くの場合、店舗を借りれば、敷金を保証金として差し入れることを求められます。 この敷金などの保証金を「差入保証金」勘定を使って記録します。
賃貸借契約書にしたがって、ある期間の間、月々の家賃を支払うことで店舗を利用できます。
契約を更新しなければ(解約すれば)、差し入れた敷金は戻ってきます。

賃貸借(ちんたいしゃく)は、あまり聞きなれないかもしれません。 賃貸(ちんたい)は、賃料を受け取る方(つまり貸す側)、賃借(ちんしゃく)が賃料を支払う方(つまり、借りる側)です。 少しずつでも、慣れていきましょう。

ちなみに、貸借(たいしゃく)対照表とよく似ています。
「賃貸対照表」というのは間違いです、漢字の意味を考えれば当たり前ですが、初期のころ混同しがちですので、気を付けてください。

取引の流れ_賃借人側

お金のやり取りと、モノ(物とサービス)のやり取りのタイミングが同じか、どちらかが先になることで商品売買と同様に、パターンが3つに分かれます。
  1. 役務提供と代金支払が同時
  2. 先に役務提供を受け(つまり、未払債務を負う)、後日代金を支払う
  3. 先に代金を支払い(つまり、前払債権を得る)、後日役務提供を受ける

1_役務提供と代金支払が同時

まずは、賃借人(物件を借りた人)の視点で取引からざっくりと確認していきましょう。

契約時
賃貸借契約書を結びます。契約書では、使用期間や家賃、支払方法などを定めます。
通常、物件を借りる場合、敷金を貸主に差し入れます。これは保証金のような役割があります。 預けている保証金なので、契約終了時にその返還を請求できます。
家賃支払
物件を利用させてもらう代わりに、毎月、家賃を支払います。
退去時
契約期間が満了し、契約を更新しなければ、退去となり、契約時に支払った敷金は返還されます。 それにより、債権・債務は精算されます。

これがシンプルな取引の流れです。

2_先に役務の提供を受け、後日代金を支払う

上の取引図では、「サービス提供を受けたこと」と「その代金を支払ったこと」を同時にしています。

一般的に、ここの「建物を使用したこと(役務提供を受ける)」と「その対価を支払ったこと(家賃を支払う)」は、両者のタイミングが一致しません。
一人暮らしをしているとわかると思いますが、多くの場合、1月の家賃を1月31日に支払うのではなく、12月中に前払いしていると思います。

このように、「お金を支払う」方が先になったり、後になったりすれば、 当事者の間に「債権・債務」が発生します。
これは商品売買で確認したように、リンゴを仕入れる前に代金を支払えば、「前払債権」が発生しました。 また、リンゴを仕入れるときには支払わず掛けとし、後日支払うことにすれば、「買掛債務」を負うことになったのと同じですね。

先に、役務提供を受けたが、いまだその対価を払っていなければ、取引相手に対し、債務を負います。
これを月次決算・年次決算の修正事項として、会計上「取引」として記録していくことになります。

では、図と共に取引内容を確認しましょう。

先に、役務提供を受ける
1か月分、借りた建物を使用しました。 このとき、賃貸人に対し、「 後日、利用代金を支払う義務(未払債務)」が発生します。
たとえば、家賃を滞納すれば、その分だけ未払債務が毎月100ずつ積みあがっていくわけです。
後で、家賃支払
翌月の10日に、1月の家賃を支払えば、債権債務は精算されます。

3_先に代金を支払い、後日役務の提供を受ける

次に、 先に家賃を支払った場合を確認しましょう。

先に、家賃支払
先に家賃を前払いすれば、賃貸人に対し、「 後日、役務提供受けられる権利(前払債権)」が発生します。 たとえばこれも、先に6ヶ月前払いした場合、使用した分だけ前払債権を100ずつ減らしていきます。滞納の場合と逆ですね。
後で、役務提供を受ける
月末になり、借りた建物を1か月分だけ使用(サービスを消費)すれば、債権債務は精算されます。

賃借人(借りた人)の会計処理

最後に会計処理を確認しましょう。

1_役務提供と代金支払が同時

契約時
差し入れた保証金は「差入保証金」勘定で記録します。
家賃支払
契約にしたがって、1か月建物を利用すれば、「支払家賃」勘定に記録します。 サービスの消費とその支払いが同時であれば、仕訳の右側に「現金」勘定で記録します。
退去時
差し入れた保証金が返ってくれば、「差入保証金」勘定を減らしましょう。 資産の勘定科目なので、仕訳の右側で記録すればよいですね。

次は、先に役務提供を受けた場合の会計処理を確認します。

2_先に役務の提供を受け、後日代金を支払う

サービスの消費
まだ1月分の家賃は支払っていませんが、サービスは消費しました。 したがって、費用は発生しています。これを「支払家賃」勘定で記録します。 「支払家賃」という勘定科目名称が紛らわしいのですが、「支払家賃」勘定は費用の勘定科目ですので、これを使いましょう。
また、1月分のサービスを消費したため、後日家賃を支払う義務を負うことになります。 したがって、これを負債として「未払家賃」勘定で記録します。
代金支払
家賃を支払えば、1月分の未払債務、つまり「未払家賃」はなくなります。

今度は、先に家賃を支払った場合を確認しましょう。

3_先に代金を支払い、後日役務の提供を受ける

代金支払
1月分の家賃を12月に前払いすれば、当然、1月に建物を利用する権利を得られます。 これを「前払家賃」勘定で記録します。 前払いすることで得た債権は資産なので、仕訳の左側に記録します。
サービスの消費
1月末になれば、サービスをすべて消費したので、「前払家賃」を減らします。 債権がなくなれば、その減少を仕訳の右側で記録しましょう。

ここまでが、借りた人の話です。次に、貸した人の立場に立ち、取引を確認します。

取引の流れ_賃貸人側

次に、賃貸人(物件を貸す人)の視点で取引を確認していきましょう。
これも、3つあります。これまで確認したのを貸す人の視点からみるだけで、図をみたらわかるように全く同じです。
クチヒゲさんの立場を逆にしただけということに注目してください。

  1. 役務提供と代金受取りが同時
  2. 先に役務を提供し(つまり、未収債権を得る)、後日代金を受け取る
  3. 先に代金を受け取る(つまり、前受債務を負う)、後日役務を提供する

1_役務提供と代金受取りが同時

契約時
物件を貸す場合、保証金として家賃数か月分の敷金を預かったりします。 この敷金は後日返還する義務であり、負債です。
家賃支払
物件を貸せば、毎月、契約で定めた通りに、家賃を受け取れます。
退去時
契約期間が満了し、契約を更新しなければ、退去となります。 問題なければそのまま、契約時に預かった敷金を返還します。 これにより、債権・債務は精算されます。

次に、先に役務を提供し、後日家賃を受け取る場合を確認します。

2_先に役務を提供し、後日代金を受領

先に、役務を提供
1か月分、建物を貸せば、借りた人に対し、「後日、賃料を受け取る権利(未収債権)」が発生します。
後で、家賃受取り
翌月の10日(契約で定めた日)に、1月の家賃を受け取れば、債権債務は精算されます。

今度は、先に家賃を受け取った場合を確認しましょう。

3_先に代金を受取り、後日役務を提供

先に、家賃受取り
先に家賃を前受けすれば、借りた人に対し、「後日、役務を提供する義務(前受債務)」が発生します。
後で、役務を提供
月末になり、役務を提供すれば、債権債務は精算されます。

最後に、貸した人の会計処理を確認しましょう。

賃貸人(貸した人)の会計処理

1_役務提供と代金受取りが同時

契約時
預かった保証金は「預り保証金」勘定で記録します。
家賃受取
契約にしたがって、1か月サービスを提供(建物を利用させれば)すれば、収益が発生します。 これを「受取家賃」勘定で記録します。
退去時
預かった保証金を返還すれば、「預り保証金」勘定を減らしましょう。 負債の勘定科目なので、仕訳の左側で記録すればよいですね。

次に確認しますが、もし対価(家賃)を受け取っていなくても、サービスを提供すれば、その対価を受け取れる権利を得ます。
したがって、「受取家賃」という収益の勘定科目を使います。 これは、「支払家賃」勘定と同様に、紛らわしいですが、収益・費用の勘定科目名称です。

2_先に役務を提供し、後日代金を受領

サービスの提供
1月分のサービス提供を行いましたが、その分の家賃を受け取っていません。
サービスを提供すれば、その対価を受け取れる権利を得ます。 したがって、これを「未収家賃」勘定で記録します。 現金を受け取っていようがいまいが、契約に従い、1月分のサービスは提供済みなので、収益(「受取家賃」勘定)に記録します。
代金受取り
後日、代金を受け取れば、未収債権はなくなります。 債権がなくなれば、その減少を仕訳の右側で記録しましょう。

3_先に代金を受領、後日役務を提供

代金受取り
1月分の家賃を12月に前受けすれば、当然、1月に建物を利用させなければなりません。サービス提供の義務を負います。 これを「前受家賃」勘定で記録します。 代金を前受けすることで負う債務は負債なので、仕訳の右側に記録します。
サービスの提供
無事に、サービスを提供できれば、「前払家賃」を減らし、それを収益(「受取家賃」勘定)に振り替えましょう。

次は、例題で確認しましょう。