返品・値引・割戻・割引
用語解説
「取引概要」では、値引きと返品を確認し、割戻しについては用語だけご紹介しました。
ここではより詳細に内容を確認しましょう。
返品・値引・割戻・割引の4つの名称はとってもまぎらわしく、 簿記3級だけを考えれば、「返品」だけ押さえておけばよいです。
といってもこの4つを比較した方がそれぞれが理解しやすく、かつ実社会で役に立つかもしれないので、4つをまとめて解説します。
結論からいえば、この4つを性質でグループ化すれば、2つに分けられます。「割引」だけがグループから外れます。詳細は後述しますので、まずはイメージをつかんでおきましょう。
いずれ慣れますし、こういうところが簿記の嫌いなところなのですが、仕入側と売上側からとらえた場合、それぞれ名称も異なります。 簿記では、返品は「仕入返品」のほかに、「仕入戻し」という言い方もされます。
用語の説明の繰り返しになりますがもう一度、返品から確認しましょう。
返品とは、数量のマイナスのことです。
たとえば、@100のりんごを3つ仕入れ、そのうち、1つを返品すると仕入価額は200になります。 リンゴの数が1つ減っていることに注目してください。
次は、値引きです。 値引きとは、単価のマイナスのことです。
たとえば、 @100で仕入れたりんごを@20値引きすると仕入価額は240になります。 さすがに、リンゴだと品質不良があれば、全数量返品するとは思いますが、 状態によっては、返品しても腐るか、捨てられるだけですし、 大幅に値引きしてもらえれば、そのまま仕入れることもあり得るでしょう。
割戻しとは、一定以上の取引実績があった取引先に対して、あらかじめ定めた額や率により、取引金額の減額や返金を行うことです。
たとえば、「仕入額が300に達すれば、30の減額を受けられる」と仕入先と定めているとします。この場合、仕入額が300であれば、支払金額は270になります。
割戻しはいわゆる、「ボリュームディスカウント(リベートともいったりします)」です。洋服屋でたまに見かける、「2着買ったら、2着目は半額」は割戻しといえます。
割引とは、掛け代金の決済をあらかじめ定めた期間内に行った場合、その掛け代金の利息(金利)相当額を減額することです。
たとえば、3月中に発生した買掛金900を割引が有効な期間内に支払えば810の支払いで済みます。この仕入割引分の90は収益として記録します。
売掛債権の場合も確認しましょう。 3月中に発生した売掛金900を割引が有効な期間内に得意先から回収すれば、実際に入金されるお金は810です。この売上割引分の90は費用として記録します。
ここまでをまとめます。 取得価額のうち、数量のマイナス修正が「返品」、単価のマイナス修正が「値引」でした。
ある一定以上の取引実績を元に、取引金額の減額を行うことが「割戻」です。なお、結果的に取得単価のマイナスになります。
締日後、この取得原価に相当する掛け代金を支払期日前に支払うことにより、利息相当の減額を行うことが「割引」です。
この図でまとめたように、「返品」、「値引」、「割戻」は掛け仕入取引の場合、「仕入」勘定と「買掛金」勘定の修正です。 「割引」は利息の修正(つまり金融取引)とみなすため、買掛金を決済したときに発生する割引額は営業外損益項目に計上されます。
4つの名称は大変まぎらわしいので、もし迷ったら、この図を思い出してみてください。 (簿記検定3級では、返品しか出題されないため、多くの人は気にしなくてもよいでしょう)
売上取引でも同じ考え方です。 売上割引も仕入割引と同じく、営業外損益項目(売上割引は、営業外費用)として計上します。
仕入返品
当社が先日クチヒゲさんからリンゴを掛けで仕入れました。 「こみつ」を注文したのに段ボールを開けると、「ジョナゴールド」が入っていたので、クチヒゲさんに返品しました。
Q-011_仕入返品
注文した商品と違う商品が送付されれば、商品を返品します。 簿記では、仕入れた商品を仕入先に返品することを「仕入戻し」といったりします。
このように返品とは、(仕入れた商品や売上げた商品の)数量のマイナスのことです。 仕入時に記録した仕訳とは逆に記録すればよいです。
3分法では、商品を仕入れたときに、「費用の+(発生)」として、「仕入」勘定を使って記録したので、仕訳の右側に「費用の-」として、「仕入」勘定で記録します。
商品を掛けで仕入れたとき、仕入先に対し、「買掛債務(負債)」が発生しました。これがなくなるので、仕訳の左側に「負債の-」として、「買掛金」と記録します。
日付 | 左側 | 右側 | ||
---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
20x1年4月7日 | 買掛金 | 100 | 仕入 | 100 |
仕入値引き
当社が先日クチヒゲさんからリンゴを掛けで仕入れました。 段ボールを開けると、リンゴがすこし小さめだったので、クチヒゲさんに値引きしてもらうことにしました。
Q-012_仕入値引
日商簿記3級の範囲ではなくなりましたが、会計処理は返品と同じです。
値引きとは、(仕入れた商品や売上げた商品の)単価のマイナスのことです。 仕入時に記録した仕訳とは逆に記録すればよいです。
3分法では、商品を仕入れたときに、「費用の+(発生)」として、「仕入」勘定を使って記録したので、仕訳の右側に「費用の-」として、「仕入」勘定で記録します。
商品を掛けで仕入れたとき、仕入先に対し、「買掛債務(負債)」が発生しました。これがなくなるので、仕訳の左側に「負債の-」として、「買掛金」と記録します。
日付 | 左側 | 右側 | ||
---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
20x1年4月7日 | 買掛金 | 100 | 仕入 | 100 |
売上返品
ハートさんからはリンゴ「2つ」と発注があったのに、うっかり「3つ」入れてしまいました。
Q-013_売上返品
注文した内容と違うものを送付しまえば、商品は返品されてしまうでしょう。 簿記では、売り上げた商品が返品されることを「売上戻り」といったりします。
仕入返品と同じように、売上時に記録した仕訳とは逆に記録すればよいです。
3分法では、商品を売り上げたときに、「収益の+(発生)」として、「売上」勘定を使って記録したので、仕訳の左側に「収益の-」として、「売上」勘定で記録します。
商品を掛けで売上げたとき、得意先に対し、「売掛債権(資産)」が発生しました。これがなくなるので、仕訳の右側に「資産の-」として、「売掛金 200」と記録します。
日付 | 左側 | 右側 | ||
---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
20x1年4月9日 | 売上 | 200 | 売掛金 | 200 |
売上値引き
ハートさんから、リンゴに傷がほんの少しだけあったので、値引きしてほしいと依頼があったので、それに応じることにしました。
Q-014_売上値引
これも日商簿記3級の範囲ではなくなりましたが、会計処理は返品と同じです。 売上時に記録した仕訳とは逆に記録すればよいです。
3分法では、商品を売り上げたときに、「収益の+(発生)」として、「売上」勘定を使って記録したので、仕訳の左側に「収益の-」として、「売上」勘定で記録します。
商品を掛けで売上げたとき、得意先に対し、「売掛債権(資産)」が発生しました。これがなくなるので、仕訳の右側に「資産の-」として、「売掛金 200」と記録します。
日付 | 左側 | 右側 | ||
---|---|---|---|---|
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
20x1年4月9日 | 売上 | 200 | 売掛金 | 200 |
参考に、掛け取引から返品・値引きまで