諸掛り
「付随費用(諸掛り)」とは、商品売買において発生する運賃などの諸経費のことでした。
仕入時の付随費用(たとえば商品の発送運賃)を「仕入諸掛」、売上時の付随費用を「売上諸掛」といいました。
当社が支払った諸掛りは、「だれが最終的な負担者なのか」によって会計処理が異なります。
結論からいえば会計処理は、仕入取引と売上取引でそれぞれ大きく2パターン(当社負担パターンと得意先負担パターン)あります。
仕入諸掛
仕入✖当社負担
まず、仕入れにおいて、当社が諸掛りを負担する場合を確認します。
Q-015_仕入諸掛 - 当社負担
当社負担の仕入諸掛は、取得原価を構成します。つまり、商品が売れるときにそれを費用処理するということです。
これは3分法だと仕入時に売れたことにして「仕入(費用の+)」勘定で処理してしまうのでわかりにくいのですが、3分法でも期末に売れ残った商品は、資産の「商品」勘定を使って「仕入」勘定から資産に振り替えることになります(詳細は決算整理の章を参照)。
仕入代金を支払えば、現金が減るので、仕訳の右側で「現金」勘定を減らします。
運送会社に引取運賃30を支払い、商品を受け取ります。3分法では商品を仕入れたときは、「仕入」勘定を増やします。 このとき、当社が負担する仕入諸掛30を「仕入」勘定に含めて処理します。
日付 | 左側 | 右側 | ||
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勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
20x1年5月9日 | 仕入 | 330 | 現金 | 330 |
仕入✖仕入先負担 - 立替金処理
Q-016_仕入諸掛 - 仕入先負担(立替金処理)
やや図が複雑に見えますが、1つずつモノとカネの動きを確認しましょう。
仕入先が負担すべき費用を当社が立て替えて支払えば、後日、仕入先に対し、発送代金30を請求できます。 この請求できる権利を「立替債権」といい、「立替金」勘定で記録します。
日付 | 左側 | 右側 | ||
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勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
20x1年5月9日 | 仕入 立替金 | 300 30 | 現金 現金 | 300 30 |
Q-025_立替金の精算
仕入先負担の運送費用30のお金を受け取れば、この仕入先に対する立替債権は精算されます。
日付 | 左側 | 右側 | ||
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勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
20x1年7月30日 | 現金 | 30 | 立替金 | 30 |
仕入✖仕入先負担 - 買掛金と相殺処理
Q-017_仕入諸掛 - 仕入先負担(買掛金と相殺)
掛けで仕入れた場合は、商品仕入代金300に対する買掛債務が発生します。 諸掛りを立替払いしたとき、立替債権の発生としてではなく、その商品仕入代金の債務である「買掛金」勘定と相殺することもできます。
後日、買掛金を支払えば、債務は清算されます。 立替債権30と買掛債務300を両建てしても手間ですし、結局は、その純額の270を支払うことになるため、仕入先負担の仕入諸掛りは、買掛債務と相殺処理ができます。
日付 | 左側 | 右側 | ||
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勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
20x1年5月9日 | 仕入 | 300 | 買掛金 現金 | 270 30 |
売上諸掛
売上✖当社負担
売上げにおいて、当社が諸掛りを負担する場合を確認します。
Q-018_売上諸掛 - 当社負担
当社が負担する発送費用を支払った場合は、「発送費」勘定で処理します。
日付 | 左側 | 右側 | ||
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勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
20x1年5月9日 | 現金 発送費 | 600 30 | 売上 現金 | 600 30 |
売上✖得意先負担 - 立替金処理
得意先負担の諸掛りを立替払いした場合を確認します。
Q-019_売上諸掛 - 得意先負担(立替金処理)
得意先が負担すべき費用を当社が立て替えて支払えば、後日、得意先に対し、発送代金30を請求できます。これを「立替金」勘定で記録します。
日付 | 左側 | 右側 | ||
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勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
20x1年5月9日 | 現金 立替金 | 600 30 | 売上 現金 | 600 30 |
Q-026_立替金の精算
後日得意先から、立て替えていた分30のお金を受け取れば、この得意先に対する立替債権は精算されます。
日付 | 左側 | 右側 | ||
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勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
20x1年7月30日 | 現金 | 30 | 立替金 | 30 |
売上✖得意先負担 - 売掛金に含めて処理
Q-020_売上諸掛 - 得意先負担(売掛金に含める)
諸掛りを立替払いしたとき、立替債権の発生としてではなく、その商品の売掛債権である「売掛金」勘定に含めて処理できます。 仕入諸掛り(仕入諸掛 - 仕入先負担(買掛金と相殺)_Q-017)と同様に、請求先が同じであれば、まとめてしまおういうことです。
後日得意先から、売掛金600と共に、立て替えていた分30のお金を受け取れば、この得意先に対する債権は精算されます。
日付 | 左側 | 右側 | ||
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勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
20x1年5月9日 | 売掛金 | 630 | 売上 現金 | 600 30 |
諸掛りのまとめ
当社が支払った諸掛りは、「だれが最終的な負担者なのか」を文章から読み取り、落ち着いて債権・債務を整理します。
当社負担であれば、当社の費用になります。
運賃であれば、売上時は発送費になりますし、仕入時は商品原価となり、売上げたときに商品原価を通じて費用になります。
取引先負担であれば、当社の費用にはなりません。立替債権は、そのまま債権とするか、債務と相殺するかされ、後日、精算します。
問題文章を図で整理するポイントは、だれに対する債権・債務なのか、それがいつ精算されるのか、つまり「だれが最終的な負担者なのか」を整理することです。 それができれば、どの処理も難しくはなくなります。