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貸倒れと貸倒引当金

ここは、貸倒引当金の補足です。日商簿記3級に合格するためだけでれば、ここはスキップしてください。
せっかくなので、会計基準にも触れながら、貸倒引当金を確認してみます。

貸倒引当金の設定の流れ

貸倒引当金を設定するには、債権を3つに分類し、その区分に応じてそれぞれ設定しなければなりません。

STEP_1
債権を3つに分類

貸倒引当金を設定するには、その債権の危険度(回収可能性)に応じて、まず、3つに分類します。

1つ目が、「一般債権」です。 この債権は、正常な経営状態にある取引先に対する債権です。

2つ目が、「貸倒懸念債権」です。 この債権は、債務弁済能力に重大な問題があったり、その可能性が高いような取引先に対する債権です。 ざっくりいえば、すでに約束した入金日をすぎていて、「もうちょっと支払い待って下さいm(__)m」となって、もう1年くらい経過しているような債権です。 多くの場合、こうなると全額の回収が厳しくなります。

3つ目が、「破産更生債権等」です。 この債権は、経営破綻の事実があったり、実質経営破綻しているような取引先に対する債権です。 ざっくりいえば、取引先が、破産、精算、会社整理、会社更生、民事再生といった法的・私的な手続きを取っていたり、手形の不渡りを出していたり、再建の見通しが立っていないような状態(つまりお手上げ状態)です。

1.債権の区分
27. 貸倒見積高の算定にあたっては、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて、債権を次のように区分する。
(1) 経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権(以下「一般債権」という。)
(2) 経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権(以下「貸倒懸念債権」という。)
(3) 経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権(以下「破産更生債権等」という。)
出所:金融商品会計に関する会計基準(日本公認会計士協会)2019年7月4日改正
STEP_2
貸倒見積高の算定

3つの区分毎に応じて、それぞれ引当金の設定方法があります。

1つ目の一般債権は、「貸倒実績率」を算出し、一般債権残高にそれを乗じて算定します。 これは正常な債権の残高に対して、一括で率を乗じて貸倒引当金を設定しようというものです。
正常だと思っていても、その残高から一定割合毎年貸し倒れが発生することがあるので、その実績率をとってざっくりと引き当ておこうというものです。

2つ目の貸倒懸念債権は、「キャッシュフロー見積法」か「財務内容評価法」の2つのいずれか」で算定します。

3つ目の破産更生債権等は、「財務内容評価法」」で算定します。

2.貸倒見積高の算定方法
28. 債権の貸倒見積高は、その区分に応じてそれぞれ次の方法により算定する。
(1) 一般債権については、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する。
(2) 貸倒懸念債権については、債権の状況に応じて、次のいずれかの方法により貸倒見積高を算定する。ただし、同一の債権については、債務者の財政状態及び経営成績の状況等が変化しない限り、同一の方法を継続して適用する。
① 債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法
② 債権の元本の回収及び利息の受取りに係るキャッシュ・フローを合理的に見積ることができる債権については、債権の元本及び利息について元本の回収及び利息の受取りが見込まれるときから当期末までの期間にわたり当初の約定利子率で割り引いた金額の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法
(3) 破産更生債権等については、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とする。
出所:金融商品会計に関する会計基準(日本公認会計士協会)2019年7月4日改正

1_実績率法

一般債権の貸倒実績率法のイメージです。

2_キャッシュフロー見積法

貸倒懸念債権のキャッシュフロー見積もり法のイメージです。

3_財務内容評価法

貸倒懸念債権の財務内容評価法(間便法)のイメージです。

破産更生債権の財務内容評価法のイメージです。

「償却債権取立益」勘定は営業外収益に計上

「償却債権取立益」勘定は、営業外収益に区分されます。
※Google検索だと古い実務指針のPDFが上位でヒットするため、ご注意ください。

直接減額後の回収
124.貸倒見積高を債権から直接減額した後に、残存する帳簿価額を上回る回収があった場合には、原則として営業外収益として当該期間に認識する。
出所:金融商品会計に関する実務指針(日本公認会計士協会)2019年7月4日改正