【図解】簿記3級 - 補助簿_商品有高帳
商品の受け入れ、払い出しおよび残高の明細を記録するために、 商品有高帳 を利用します。
商品有高帳は、商品の種類ごと(リンゴ、ミカン、バナナなどの種類別)に作ります。このことを「商品の種類ごとに口座を設ける」といったりもします。
既に売掛金元帳や買掛金元帳で見てきたように、仕入別(A社、B社、C社など)・得意先別(a社、b社、c社など)に「口座」を設けていましたが、あれと同じです。
- 補助記入帳
特定の 取引 の明細を記録するものです。
- 補助元帳
特定の 勘定 について、取引先別、品目別または、種類別に明細を記録するものです。
商品有高帳の目的
商品有高帳を作る目的は、2つあります。
1つ目は、売上原価の算定(払出金額(売上原価= 払出単価 ×払出数量)の算出 )を行うためです。
2つ目は、商品の在庫金額の計算を行うためです。
この両者は、表と裏の関係です。
払出単価の決定方法
商品の種類が1種類だったとしても、その仕入単価は変わりえます。同じ単価で仕入れ続ける方がまれでしょう。
払出金額(売上原価)を算出するためにはまず、払出単価を決めなけばなりません。
この場合、どのように払出単価を決定するのか(言い換えれば、期末棚卸資産の単価)が問題になります。
そもそも、仕入れた商品の単価を売上げた商品に個別に(物理的に)すべて紐づけられれば、問題はありません。
このように個別にすべての仕入単価を払出単価と紐づけて払出金額を計算する方法を「個別法」といいます。
しかし、これは大変手間がかかります。八百屋ではまず無理でしょう。
※たとえば、単価の大きい商品(中古車の仕入販売業、宝石の仕入販売業など)であれば、
個別に仕入単価を把握し、それをそのまま払出単価とする個別法を採用することは、経営管理の観点からも理にかなっているといえそうです。
取引例を使って、具体的に確認してみます。
まず、商品を3つ、単価100、300で仕入れます。
次に、商品を3つ、単価110、330で仕入れます。
なお、先ほど仕入れた商品は在庫として保有しています。
再度、商品を3つ、単価120、360で仕入れます。
得意先は多数の陳列された商品の中から、品質の良さそうな商品を選んで購入するため、今回は2回目に仕入れた商品が売れたとします。
このとき、「個別」に払出単価を決定できればよいのですが、大変手間です。
払出単価をこの3つの単価を使って決定しなければ、売上原価と売上総利益(粗利)がわからないままとなってしまいます。
まず、商品を3つ、単価100、300で仕入れます。
次に、商品を3つ、単価110、330で仕入れます。
なお、先ほど仕入れた商品は在庫として保有しています。
再度、商品を3つ、単価120、360で仕入れます。
得意先は多数の陳列された商品の中から、品質の良さそうな商品を選んで購入するため、今回は2回目に仕入れた商品が売れたとします。
このとき、「個別」に払出単価を決定できればよいのですが、大変手間です。
払出単価をこの3つの単価を使って決定しなければ、売上原価と売上総利益(粗利)がわからないままとなってしまいます。
それでは、八百屋のような単価の低い商品を大量に仕入・販売するような業態ではどのように、払出単価を決めればよいでしょうか。
払出単価の決定について、物理的な商品の動きとは切り離し、一定の仮定を置いて決定すればよいです。この仮定を置くところがポイントです。
払出単価の決定についての仮定の置き方には、大きく3つあります。
- 先入先出法(First In First Out method:FIFO )
先入先出法は「時間的に、先に仕入れたものから先に払い出される」と仮定して、払出単価を計算する方法です。
- 後入先出法(Last In First Out method:LIFO )
後入先出方は「時間的に、後に仕入れたものから先に払い出される」と仮定して、払出単価を計算する方法です。
- 平均法(移動平均法(moving average method)、総平均法(weighted average method))
移動平均法は、仕入によって在庫に動きがある都度、平均単価を計算し、これを払出単価と仮定する方法です。
総平均法は、月間や年間の期間でまとめて一括で平均払出単価を算出します。
※他にも、「売価還元法」や「最終仕入原価法」がありますが、ここでは省略
日商簿記3級での出題対象は、「先入先出法(FIFO)」と「移動平均法」の2つです。
先ほどの取引例を使って、「先入先出法」、「後入先出法」、「平均法」を使うとどうなるか具体的に確認してみます。
先入先出法では、先に仕入れた商品の単価@100を払出単価とします。
後入先出法では、後に仕入れた商品の単価@120を払出単価とします。
平均法では、商品の平均単価@110を払出単価とします。
なお、この例では総平均法でも移動平均法でも@110となります。
先入先出法では、先に仕入れた商品の単価@100を払出単価とします。
後入先出法では、後に仕入れた商品の単価@120を払出単価とします。
平均法では、商品の平均単価@110を払出単価とします。
なお、この例では総平均法でも移動平均法でも@110となります。
この3つの払出単価の決定方法のイメージを図にしたので、スライドボタンを押して確認してください。
繰り返しますが、八百屋などでは個別に対応させるのは大変手間なので、 物理的な商品の動きとは切り離し、払出単価を仮定して決めている ことに留意してください。
※簡単にするため、すべて仕入数量と売上数量はすべて1つとします。また、1年間でこの仕入取引5つ、売上取引4つだけしかなく、期末を迎えるとします。
先入先出法のイメージ
先入先出法は、筒のようになっているイメージです。
それはちょうど、動物の体と同じように、口から食べたものが排泄されるようなイメージです。
先入先出法では、先に仕入れた単価100から払い出したと仮定します。
次に2番目の仕入単価110を払い出し単価と仮定します。
次に3番目の仕入単価120を払い出し単価と仮定します。
次に4番目の仕入単価130を払い出し単価と仮定します。
最後に期末を迎えました。
@140は、そのまま在庫の評価単価となります。
このように、払出単価の決定は、在庫の単価の決定と表裏一体です。
先入先出法では、先に仕入れた単価100から払い出したと仮定します。
次に2番目の仕入単価110を払い出し単価と仮定します。
次に3番目の仕入単価120を払い出し単価と仮定します。
次に4番目の仕入単価130を払い出し単価と仮定します。
最後に期末を迎えました。
@140は、そのまま在庫の評価単価となります。
このように、払出単価の決定は、在庫の単価の決定と表裏一体です。
後入先出法のイメージ
在庫の箱が変わったことに注目してください。
後入先出法は、奥行きのある筒型の収納箱のようなイメージです。
先がつっかえているため、先に入れたものは取り出せず、後に入れたものから取り出すことになります。
後入先出法では、後に仕入れた単価140から払い出したと仮定します。
次に4番目の仕入単価130を払い出し単価と仮定します。
次に3番目の仕入単価120を払い出し単価と仮定します。
次に2番目の仕入単価110を払い出し単価と仮定します。
最後に期末を迎えました。
@100は、そのまま在庫の評価単価となります。
後入先出法では、後に仕入れた単価140から払い出したと仮定します。
次に4番目の仕入単価130を払い出し単価と仮定します。
次に3番目の仕入単価120を払い出し単価と仮定します。
次に2番目の仕入単価110を払い出し単価と仮定します。
最後に期末を迎えました。
@100は、そのまま在庫の評価単価となります。
平均法のイメージ
平均法は、ミックスジュースをかきまぜたイメージです。
今回の例では、移動平均法も総平均法も払出単価は結果として同じになりますが、移動平均法の単価が都度変わっていることに注目してください。
単価110で仕入れ、在庫として保有します。
移動平均単価が@105((@100+@110)/2)になります。
単価120で仕入れ、在庫として保有します。
移動平均単価が@110((@100+@110+@120)/3)になります。
単価130で仕入れ、在庫として保有します。
移動平均単価が@115((@100+@110+@120+@130)/4)になります。
単価140で仕入れ、在庫として保有します。
移動平均単価が@120((@100+@110+@120+@130+@140)/5)になります。
平均法では、平均単価120を払い出し単価と仮定します。
途中で仕入れがあれば、移動平均単価はかわりますが、今回の前提ではすべて@120となります。
最後に期末を迎えました。
平均単価@120がそのまま在庫の評価単価となります。
単価110で仕入れ、在庫として保有します。
移動平均単価が@105((@100+@110)/2)になります。
単価120で仕入れ、在庫として保有します。
移動平均単価が@110((@100+@110+@120)/3)になります。
単価130で仕入れ、在庫として保有します。
移動平均単価が@115((@100+@110+@120+@130)/4)になります。
単価140で仕入れ、在庫として保有します。
移動平均単価が@120((@100+@110+@120+@130+@140)/5)になります。
平均法では、平均単価120を払い出し単価と仮定します。
途中で仕入れがあれば、移動平均単価はかわりますが、今回の前提ではすべて@120となります。
最後に期末を迎えました。
平均単価@120がそのまま在庫の評価単価となります。
すこし、前置きが長くなりましたが、具体的に「商品有高帳」を確認してきましょう。
商品有高帳の記載内容
補助元帳である、商品有高帳にはどんな項目が記録されるのかを確認しましょう。
先入先出法
1_勘定欄
商品の種類毎(バナナやミカンなど)に作ります。
2_受入欄
仕入れた商品の数量、単価、合計金額を記録します。
※この図では触れていませんが、売上戻り(返品)があれば、ここの受入欄に原価で記録します。
※また、仕入諸掛(引き取り運賃)は仕入原価に含めました。したがって、受入欄の合計金額には仕入諸掛分が含まれます。仕入単価はこの諸掛分を含んだ金額を仕入数量で割って求めます。
3_払出欄
売り上げた商品の数量、払出単価、合計金額を記録します。ここは売価ではなく 原価 という点に注意してください。
※仕入戻し・値引きのときにも、ここの払出欄に記録します。
先入先出法では、先に仕入れたものを先に払い出すと仮定します。
5_残高欄
単価が異なる場合、行を分けて記録します。
6_締め
さすがにリンゴだと腐ってしまいますが、仮にこのまま在庫として保有し続ければ、他の帳簿で確認したのと同様の手順で締め切ります。
1_勘定欄
商品の種類毎(バナナやミカンなど)に作ります。
2_受入欄
仕入れた商品の数量、単価、合計金額を記録します。
※この図では触れていませんが、売上戻り(返品)があれば、ここの受入欄に原価で記録します。
※また、仕入諸掛(引き取り運賃)は仕入原価に含めました。したがって、受入欄の合計金額には仕入諸掛分が含まれます。仕入単価はこの諸掛分を含んだ金額を仕入数量で割って求めます。
3_払出欄
売り上げた商品の数量、払出単価、合計金額を記録します。ここは売価ではなく 原価 という点に注意してください。
※仕入戻し・値引きのときにも、ここの払出欄に記録します。
先入先出法では、先に仕入れたものを先に払い出すと仮定します。
5_残高欄
単価が異なる場合、行を分けて記録します。
6_締め
さすがにリンゴだと腐ってしまいますが、仮にこのまま在庫として保有し続ければ、他の帳簿で確認したのと同様の手順で締め切ります。
仕入戻り・値引きがなければ、払出欄の合計金額が売上原価を示します。
移動平均法
※先入先出法と重複する箇所は省略します。 1_残高欄
移動平均法では、仕入の都度、平均単価を計算し、記録します。
2_払出欄
払出単価は計算した平均単価を使用し、払出金額を計算します。
1_残高欄
移動平均法では、仕入の都度、平均単価を計算し、記録します。
2_払出欄
払出単価は計算した平均単価を使用し、払出金額を計算します。
仕入戻り・値引きがなければ、払出欄の合計額が売上原価を示します。
帳簿の数字とビジネスの現場の数字のつながりが見えてくるようになると、帳簿を見れば大体何が起きているのかを理解できるようになるかもしれません。
商品有高帳と他の帳簿とのつながり
商品売買に関する帳簿のつながりをまとめると以下のようになります。
現金決済だけ図示しましたが、掛け取引の場合はこれに「買掛金」勘定と仕入先別の「買掛金元帳」、「売掛金」勘定と得意先別の「売掛金元帳」が加わります。